・ まずは次の文章をご覧下さい。 (1)(2) の文共に、類例は大学入試問題にもしばしば見られます。
(1) Never fail to call me every day.
( 毎日私に電話を下さい。 )
(2) Never fail to come here tomorrow.
( 明日必ずここに来て下さい。 )
(3) He never fails to get up before six.
( 彼は必ず 6 時前に起床します。 )
語句
not fail to ~:直訳が「~することに失敗しない / ~することを忘れない」がら、「必ず~する」と言う意味で使われ、 not forget to 、 be sure to ~とほぼ同じ意味
get up :起床する ⇔ go to bed 「床につく」
なお「起床する」「床につく」は「目が覚める」= wake up 、「眠る= fall asleep とは意味が違いますので注意しましょう
・もしこの例文を natives が見たならば、例文の (1)(3) はごく普通の英文であるのに対し、例文 (2) はきっと誰でも奇異に感じる事でしょう。この理由は、 never が not と同義でない事にあり、普段私達が何気なく使用している英語でも、如何に難しい問題を含んでいるかが認識させられる典型例といえましょう。
・ Collins Cobuild Advanced Learner's English Dictionary の 2003 年版の never の項
“Never means at no time in the past or at no times in the future.” と定義されており、never は「過去・現在・未来のいかなる時に於いても~でない」という意味である事が解ります。一見何の変哲もないこの never も、「いつも~である」を意味する always の反意語である事を考えますと、読者の皆さん方にとっては never の定義も明白であると思います。
・ここで再度、例文 (1) ~ (3) に戻りますと、例文 (1) と (3) は「習慣的、恒常的」内容であるのに対し、例文 (2) は「明日ここに来る」という、ただ一回の出来事を述べているに過ぎません。ここに (2) が不自然に感じられる理由があり、 never は always と同様に、「習慣的、恒常的」内容を述べるものでなければならないのです。
・言い換えれば、 never は「習慣的・恒常的」内容と共起するのであり、
(A) 一回の出来事を表現するのに never を使ってはならない。
(B) 短期間の内容を never と共起させると不自然に響く事が多い。
と纏める事が出来るでしょう。
・上記 (2) の例文は、 never を他の表現に変えるか、 never fail to と同義の他の表現に変えると自然な英語になります。
(4) ○ Don't fail to come here tomorrow.
(5) ○ Don't forget to come here tomorrow.
(6) ○ Be sure to come here tomorrow.
・余談になりますが、 fail は極めてマイナスのイメージを持った言葉であり、実際にこの語を会話で使うことは慎んだ方が良いでしょう。最後に、米国内の報道機関のひとつである「 csmonitor.com 」より、 fail to が使われている用例を下記に挙げておきました。やはり、この用例でも「マイナスイメージ」が付きまとっている事に注目して下さい。
(7) WASHINGTON – Americans expect public schools to be more accountable for student progress, but oppose concrete steps in a new federal law to punish or even identify schools that fail to meet that goal. [2004, 8, 25]
語句
expect X to V :XはVするだろうと思う / 信じている
expect には「何か良い事が起こる事を期待する」という意味はない
accountable :責任がある、報告義務のある、説明がつく
progress :進歩
oppose :~に反対する
concrete :具体的な ⇔ abstract
steps :手段
federal law :連邦法
punish :~を罰する
identify :~を確認する、識別する、特定する
meet :「条件・規準」などに合う、適合する
和訳
ワシントン:アメリカ人は公立学校が生徒の進歩の状況に就いて、より ( 詳しく )( 国民に対して ) 報告すべきであると思っているが、その目標に達しない学校を処罰したり、学校名を明らかにしようとする新しい連邦法制定への具体的な動きに対しては反対している。
・それではまた次回、お会いしましょう。